プラス通信 2019年10月号
筋トレをしよう!
筋肉は重要な臓器です!
みなさん「いつまでも元気で楽しく」と思われていますよね。
しかし、思っているだけでは実現は難しくなります。いつまでも元気でいるための大切なポイントが「筋肉」です。これからの日本では、高齢になって身体機能が衰えてきて自活が難しくなり、介護が必要になる高齢者が激増してくるという警告がされています。こうなる大きな原因が「筋肉の衰え」です。
これからの日本では、高齢になって身体機能が衰えてきて自活が難しくなり、介護が必要になる高齢者が激増してくるという警告がされています。こうなる大きな原因が「筋肉の衰え」です。
筑波大学大学院スポーツ医学専攻教授 久野譜也医学博士は
「少しの段差でつまずいた」
「モノをまたいで通ろうとしたら、つま先が引っかかって転びそうになった」
この様なとき、「足元をちゃんと見ていなかったせいかな」などと考えがちですが、こうしたことは「筋肉の衰え」が根本原因ですと指摘しています。
筋肉量は20代をピークに、30代以降は年間1%ずつ、右肩下がりに減り続けていきます。
つまり、ピーク時に比べて、40代では10%、50代では20%、60代では30%も筋肉量が減っていきます。
筋肉量の低下は特に下半身を中心に進んでいきます。
上半身と下半身の筋肉量の減少率を比較すると、下半身のほうが1.5倍大きくなっています。30代以降は、自覚がなくても、下半身の筋肉量の低下は少しずつ進んでいるのです。
筋肉量が10%、20%と減っていけば、当然、身体の動きにも影響が表れ、つまずいたり転びやすくなったり、腰や膝が痛んだり、疲れやすくなったり、身体が思うように動かなくなったり…
そうなると、運動したり歩いたりするのがおっくうになって、ますます筋肉量が減ってしまい、運動機能や体力の低下が進み、要介護や寝たきりになるリスクも高まっていくことになります。
健康長寿に立ちはだかる「60代の壁」「70代の壁」
60代では、長年の生活習慣病による肥満やメタボリック・シンドローム、高血圧、糖尿病などによって、脳卒中や心筋梗塞などが起こってきます。60代の壁超えは、40代~50代での身体づくりが重要です。
この年代で「太ってきた」と感じている人は要注意。それは筋肉量が減って、基礎代謝が落ちている証拠ですから、この段階で筋トレで筋肉量を維持し、メタボになるのを食い止めておくことが大切です。
筋肉には糖分や脂肪の代謝をコントロールする役割があり、筋肉の減少は生活習慣病の増加と密接にかかわっています。もちろん「タンパク質をしっかり摂る食生活」も大切です。
60代の壁を無事に超えると、今度は「転倒骨折」や「フレイル(虚弱)」の問題が立ちはだかってきます。転倒骨折やフレイルは、寝たきりに直結します。これが70代の壁です。
この壁の原因となるのが、初老期の「サルコペニア(筋肉量の減少)」の放置です。人間は70代になると、筋肉量の減少が進み、歩行機能の衰えが明らかになってきます。特に顕著に見られるのが、すり足になる歩き方です。足が上がらず、歩幅が狭くなり、ちょこちょこと歩くようになります。
この歩き方は転倒の原因になりがちで、転倒時に骨折をして、それを機に思うように歩けなくなり自活できなくなるケースが非常に多いのです。
70代の壁を乗り越えて、健康長寿を目指すには、自分の足でしっかり歩いて、移動できる筋肉量を維持することが肝心です。そのためには、50~60代のうちから、筋トレで、特に下半身の筋肉を強化することが重要です。
筋トレはいつから始めても効果がある!
60代の壁、70代の壁のいずれにおいても、筋肉が重要なカギとなります。そうです「筋肉は重要な臓器」なのです。そして、トレーニングによって回復できる唯一の臓器です!
50代、60代になると、「もう若くないのに、今から筋トレをしてもムダなのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、筋トレを続けていれば、90代の人でも筋肉が肥大することが分かっています。
特に、つまずきやすい人は、筋肉が発しているSOSサインです。筋トレをすぐに始めましょう!
タンパク質と 筋トレの両輪で筋肉は保たれる
プラス通信2017年12月号で、タンパク質をしっかりと摂る事が体作りに欠かせない事を書かせて頂きました。特にシニア期に入ってからタンパク質をしっかりと摂る事が重要なのですが、それだけでは車の片輪です。運動、特に筋肉に負荷をかける「筋トレ運動」をしないと筋肉は増えません。
ヨガ、有酸素運動より、「筋トレ」です!
レッツトライ!
いきなりフィトネスジムは、出来ないと恥ずかしいとか、なにか強いきっかけがないと敷居が高いかも知れません。そこで、まず日常生活の中でチョットした時間を使ってする「コツコツ筋トレ」から始めてみてはいかがでしょうか?
・脹ら脛~太ももの筋肉を鍛えましょう
体の中で最も大きな筋肉があるのは足(太もも、脹ら脛)の筋肉です。筋トレをする時間単位でみると、この部分から鍛えていくのが効率的です。また、「自活=歩ける」という関係が大きいので、足の筋肉を鍛えることが健康長寿のカギとなります。
脹ら脛は「第二の心臓」と言われていて、全身の血液循環をスムーズにしていくために大切な筋肉です。脹ら脛がしっかりと収縮しないと、血液が下半身に停滞しがちになり、全身の血液循環が停滞傾向になることから、頭痛、肩こり、生理痛、足が冷える、など様々な体調不調を起こしやすくなります。
特に「足がむくむ」方は、脹ら脛が痩せて血液が足に留まっているのが原因ですので、脹ら脛をしっかりと鍛えることをお勧めします。家の中でいつでも出来るのが、足指グーパー運動、かかとの上げ下ろしです。
・足指グーパー運動 脹ら脛、脛部分の筋トレになります
床にお尻を付けて壁などに背中をつけて、足を伸ばして足指を開いたり閉じたりします。浴槽内で出来る場合は入浴時にされると良いです。足を伸ばすのが辛い場合は、イスに腰掛けて行ってもいいです。
ポイントは、足の指を閉じる時、開く時に「ギュッ」と力を入れて(できるだけ全力で)グーパーすることです。慣れていないと10回くらいでかなり足が疲れます。出来る回数で構いません。あきらめずにがんばっていくと100回出来るようになってきます。足指と一緒に、手指もグーパーすると手の筋トレになりますよ。
※手にハンドグリッパーを握ってすると効果的です。
脳トレも合わせてトライしてみよう!
・ステップ1 右と左の足と手の開く閉じる、を逆にします。
右足手が閉じているとき、左足手は開く、これを交互にしていきます。
・ステップ2 足指の開く閉じるのと手の開く閉じるを逆にします。
足指が閉じるとき、手指は開きます。これを交互にしていきます。
・ステップ3 ステップ1+2の、左右反対閉じ開き+手足反対閉じ開きです。
右足閉じる、右手開く
左足開き、左手閉じる
これを同時交互に、足と手のグーパーを行います。
※この脳トレは、足指のグーパーがある程度の回数できるようになってからでいいです。始めからしようとすると挫折します。始めはうまく出来ないと思います。出来ないのは、脳の回路が出来ていないからです。始めは足と手指の動かしを確認しながらゆっくりと動かしていき、そのうち脳の回路が出来ていて、スムーズに出来ようになっていきます。
・かかとの上げ下ろし
まっすぐ立って「かかとを上げて下ろして」を繰り返し行います。転倒防止のため壁に手をついておこなったほうがいいです。足は肩幅程度に開きます。つま先立ちになるときにグッと力を入れて立ちます。かかとを床にストンと言う感じで落とすと、骨に刺激が伝わり「骨密度」を増やす効果があります。
※マンションなどでは、階下に迷惑になる場合がありますのでご注意下さい。
かかとを床にストンが出来ない場合、床につかないように寸止めします。これはこれで脹ら脛の筋トレ効果が高まります。
かかとの上げ下ろしは、最初は両足で構いません。回数も10~20回ほどで良いです。慣れてくれば回数を増やしていきます。両足で100回程度できるようになったら、次は、片足でします。使わない足を上げ下ろしする足のアキレス腱にのせるようにして、手を壁につけて体を支えて片足でかかとの上げ下ろしをします。
最初は出来る回数で構いません。筋肉がついてくると自然と出来る回数は増えてきます。私は、入浴時や歯磨きしながらやっています。最初の頃はそんなに出来ませんでしたが、今は、両足つま先立ちを50回して、その後に片足1回20回ずつ1セットで、3セットしています。
・ステップの上り下り
階段の1段程度の高さのステップを上り下りします。高さ調節出来るステップ台が、アマゾンで2,000~3,500円程度で打っていますのでそれを購入されてもいいと思います。※4段階調節&防音、防傷マットがセットになったものが3,480円でありました。
※ステップを踏むときは、できるだけ前を見て下ばかりを見ないようにします。
※踏み外したりしても大丈夫な場所でするようにしましょう。
ステップ運動は、慣れてくれば運動強度を上げていきます。
自分で出来る最大の速さで全力で20秒間ステップを踏みます。
そして、2分間休みます。これを1セットとして、3セットします。
※セットごとに、ステップに上る足を左右交互にします。
※ウォームアップを2分して、クールダウンを3分します。
これは、HIITという「高強度(HighIntensity)の負荷のかかる運動と休憩を短い間隔(Interval)で繰り返すトレーニング(Training)」のことで、「有酸素運動」と「無酸素運動」両方の運動効果が得られます。
HIITは、実質的には「20秒×3回」の「たった1分」ほどしか運動をしていませんが、これだけで「45分の軽い運動」と同様の効果が得られます。
※私は薬局で1日1~2回するようにしていますが、これは正直かなりきついです。3セットめでは、明らかに上り下りの速度が落ちてしまいます。
筋トレのポイント
筋トレは、筋肉に負荷をかける必要がありますので、少しきついなと感じる程度で行うことがポイントです。
ただし、無理をしすぎると筋などを痛める事がありますので、体が重く感じる、筋肉痛が気になる場合は、1~数日休むことも必要です。
筋力が弱い方は、出来る範囲で(最初は少し足りないと感じる程度で)やっていき、少しずつ回数を増やしていくようにします。
プラス通信12月号では「日常生活で出来る筋トレ」をご紹介予定です。
では、それまで今月号の筋トレにトライしてみてください!