プラス通信2020年3月号
花粉症
花粉症についてのプラス漢方の考え
花粉症はアレルギーと考えられていますが、私は「ストレス」が原因と考えるに至っています。
ただ、ストレスの正体が問題で精神的な事ではなく、毎日の食事の影響で「ストレス体質」になり、花粉などの僅かな刺激に過剰に反応してしまう状態になっていると考えています。
考えてみて下さい。
花粉症は、鼻水、鼻づまり、目の痒み、充血、咽がイガイガして咳が出る、顔が痒くなる、殆どがこの様な症状です。全ての症状が「首から上」だけに表れるのです。
肌が痒くなる人でも何故か「顔」です。
花粉症がアレルギーならば、花粉がついた手や足などにも痒みが起きると考えられますが、重症の人でも顔以外に痒みが出る人はいないようです。花粉症がアレルギー反応による症状であるなら、首から上だけに症状が表れる理由が説明できません。アレルギー反応とはどのような反応で起きるのかを知ると、花粉症がアレルギーでは説明できない理由がよく判るはずです。
アレルギー反応がおきるシステム
花粉症の人はスギ花粉に対応するIgE抗体(免疫抗体の1種)が多く作られているためにアレルギー反応が起きるという理論です。
気管支粘膜,鼻粘膜,目、皮膚など外界と接触する組織には、マスト細胞という細胞が多く存在しています。マスト細胞は「ヒスタミン」など数種類の炎症誘発物質を含んでいます。
マスト細胞の表面にはIgE抗体(アイジーイーこうたい)が多く結合しています。
※スギ花粉などのアレルギーを起こすものを「抗原(こうげん)」と言います。
抗原と抗体は、鍵と鍵穴の関係で1つの抗原は特定の抗体(IgE抗体)と結合する関係にあります。
スギ花粉と結合するスギ花粉IgE抗体、ハウスダストと結合するハウスダストIgE抗体、ダニと結合するダニIgE抗体と言うように、それぞれの抗体と結合する特定のIgE抗体という関係です。
花粉症の人はマスト細胞の表面にスギ花粉と結合する、IgE抗体が多数結合しています。
IgE抗体とスギ花粉が結合すると、その刺激で、マスト細胞からヒスタミンなどの炎症誘発物質が放出され、炎症がおきて鼻水、目の充血、痒み、などがおきるという理論です。
スギ花粉に対するIgE抗体がなぜ多く作られるようになるのか
清潔仮説
・IgE抗体はどのようにして作られるのか
体には空気や食べ物と一緒に、花粉、ウイルス、細菌などが入ってきます。
小腸にはリンパ細胞が集まった「パイエル版」と言う免疫組織があり、そこでは、入ってきた物が、危険なものなのか、安全なものかの判別が行われています。危険なものと判別した異物に対しては、ヘルパーT細胞という免疫細胞に信号が伝わり、ヘルパーT細胞は「危険な異物を排除しろ」という指令をB 細胞いう免疫細胞に出します。指令を受けたB細胞は、異物に対する抗体を作っていきます。花粉に対する抗体は「IgE」と言う種類の抗体になります。
・IgE抗体がたくさん作られる人と作られない人の違いは?
ヘルパーT細胞には「Th1」と「Th2」の2種類があります。
「Th1」と「Th2」のバランスがアレルギーに関係していると考えられています。
Th1は、B細胞にIgG抗体と言う抗体を作る指令を出します。
IgG抗体は、細菌やウイルスと戦うときに活躍する抗体です。
Th2は、B細胞にIgE抗体を作る指令を出します。
Th1とTh2はお互いを牽制し合う免疫タンパクを出しあっています。
花粉症の人では、Th1が少なくTh2が多いため、IgE抗体が多く作られるという理論です。
なぜTh1とTh2のバランスが崩れたのか
Th1は、細菌が侵入してきたときに活躍する免疫細胞です。
私たちの生活環境が清潔になり、病原菌の侵入が減ってくるとTh1は刺激を受ける機会が減ってきます。そうするとTh1が分泌するTh2を抑制する免疫タンパクが減ってくるため、Th2が増えてきます。増えたTh2からはTh1を抑制する免疫タンパクが分泌されるため、Th1が更に減っていくため、Th2が過剰に増え、IgE抗体を多く作られるという理論です。
この理論で証陽散EXを試してみたところ驚きの結果が・・
証陽散EXの主成分は2種類の乳酸菌です。
菌が小腸のパイエル板に取り込まれるとTh1が刺激されて増殖し、Th2が抑制されてIgE抗体の産生が減少し、アレルギーが治まっていくという理論です。
※近年の研究で「パイエル版」の刺激効果は、菌の生死より、菌体数が刺激効果に大きい事が判明しています。菌体数が多いほど刺激効果が高くなります。
証陽散EXに採用している乳酸菌は、EC-12株という小さい球菌で、EC12は重量あたりの菌数が他の菌株と比べると桁違いに大いという特徴があります。それを加熱殺菌することで高度に濃縮されています。つまり、証陽散EXはTh1刺激作用が非常に強く、IgE抗体の生産を強力に抑え、服用していくと花粉症が表れなくなってくると考えられました。
IgE抗体は寿命が短く、3日で約半分が消失していきます。
証陽散EXのIgE抗体の生産抑制効率は高いため、証陽散EXを服用して5日目位から花粉症が出なくなると計算されました。
証陽散EXで起きたこと
試してみたところ、飲んだその日から症状が起きなくなった方が相当の割合で見られました。早い人では、服用した数分後から効果が表れる人もいました。
アレルギー理論では、証陽散EXを服用したその日から花粉症が治まる説明がつきません。
しばらく、理由がわからなかったのですが、あることから原因に気づきました。
私は2009年9月から「糖質制限食」をしています。
ダイエットに有効と言うこと、血糖値が上がらない、と言うことで本当かどうかを試してみたのです。結果は、5ヶ月で体重が5kg、腹囲が8cm減少しました。
そして、2010年の夏に以前の食事に戻すとどれ位体重が増えるのかを実験してみたのです。体重は徐々に増えてきましたが、9月位から何故か「鼻づまり」「くしゃみ」が表れてきました。
秋の花粉症もなく、風邪をひいた感じもなく、原因がわからなかったのですが、あるとき「糖質」が原因なのでは?と思ったのです。そこで、糖質制限を再開したら、翌日から鼻の状態が普通になってきたのです。糖質を止めて鼻炎症状が良くなった理由がわからなかったので、糖質制限について色々と調べました。
糖質制限が広がってきて「糖質制限をやってみました」という色々な体験報告がかなり増えていて、その体験報告に「花粉症」が出なくなった、軽くなった、と言う報告がいくつもあることに気がついたのです。
ただ、理由については誰もよくわからないと言う事でした。花粉症の原因説には「アレルギー」「ストレス」「甘い物」と様々な説がありますがどの説もすべて説明できない部分があります。
しばらく考えていたのですが、ある時、「糖質」と「ストレス」と「証陽散EX」が一つにつながったのです。
ストレスで体におきる生理反応
類人猿の時から、人は大型の肉食動物から食べられる側であり、生命を失うことが日常の環境で生きてきました。つまり、太古からの殆どの間「ストレス=命の危機」で、その状況を回避するための生理反応が「ストレス反応」です。
体内で抗ストレスホルモンと言われる「ステロイドホルモン、アドレナリン」などがたくさん作られ、体を次の様に変化させていきます。
1、末梢血管や副交感神経支配下の消化器、生殖器などの血管を収縮させてその部位の血流量を抑制します→食欲の低下、性欲の低下として表れる
2,心臓の収縮を強め、脳、骨格筋に多くの血液を集めます→動悸、興奮、血圧の上昇などとして表れる
3,肝臓と筋肉に蓄えているグリコーゲンをブドウ糖に変えて、血液中に放出します→血糖値が上がります。つまり「ストレスによって血糖値が上がる」のです。
古代から人間が長く食べていたもの
人類が発生してから約200~400万年程度と推定されています。
農耕文明が発生したのが今から約1万年前です。人類が小麦、米を食べる様になったのは農耕文明以降で、農耕以前は、小動物、昆虫、小魚、貝などの動物性食品を中心に食べ、手に入れば木の実や果物(今みたいに甘くはない)を少し食べていたと考えられています。
タンパク質、脂肪は食べても血糖値は殆ど上がりません。つまり、太古からの殆どの歴史で人間が食べていたものは、糖分がほぼゼロのものしかなく、「食べて血糖値が上がる」と言うことはなかったのです。
血糖値が上がるのは命が危ない時で、人間のDNAには「血糖値が上がる=命が危ない」と言う情報が刻まれていると考えられます。
近代になり、大量の炭水化物と砂糖を食べるようになり「食べて血糖値が上がる」という事がおきて来ました。しかし、人のDNAは「食べて血糖値が上がる」事を想定していません。「血糖値が上がる=命の危機」がDNAの基本設計なのです。
そのため、体は血糖値が上がると「危険を回避する反応」を起こします。つまり、脳の情報処理量を増やすために「脳に多くの血液を供給する=頭部の血流量を増やす」という生理反応が起きます。
血流量とマスト細胞の関係
抗アレルギー剤で効果が見られるのは事実です。抗アレルギー剤で効果が見られると言うことは、花粉症にはアレルギー反応が関係している事を示しています。
しかし、糖質制限によってIgE抗体の生産が抑えられたり、アレルギー反応がブロックされるとは考えにくいです。
証陽散EXを服用してすぐにIgE抗体がなくなることもないでしょうし、抗アレルギー剤のようなアレルギー反応を抑える働がない事は当然です。しかし、証陽散EX、糖質制限で花粉症が改善すると言う事は、証陽散EX、糖質制限によってアレルギー反応が起きなるなく現象が起きているのは事実です。
マスト細胞について調べていく内に次のような可能性に行き着きました。
マスト細胞は、粘膜に存在する「粘膜型」と皮膚と粘膜の下の組織に存在する「結合組織型」があります。粘膜型マスト細胞は、普段は粘膜の下に沈んでいて、粘膜にスギ花粉などの抗原が付着した刺激で粘膜表面に表れ、抗原(スギ花粉)とIgE抗体が結合してアレルギー反応が起きます。
証陽散EXや糖質制限によって花粉症が起きなくなるのは、粘膜型マスト細胞は、血流の状態によって粘膜の表面に表れたり、沈んだままになったりする可能性が考えられます。
粘膜を走る微小血管の動脈圧が亢進すると、粘膜型マスト細胞は表面に押し出される力が働き、常に粘膜表面に存在する状態になるのかも知れません。動脈圧が高くならなければ、粘膜型マスト細胞は沈んだままで、スギ花粉とIgE抗体が結合しにくいためアレルギー症状が起きないのかも知れません。
証陽散EXの本当の働き
腸粘膜には多くの神経細胞があります。生物の進化過程を見ると、消化管の神経細胞の発生は脳より古くなります。つまり生命維持という生命の基本システムにおいて、消化管神経細胞は脳より優先度が高い神経細胞群と考えられます。
※消化管神経細胞は、精髄神経、自律神経を介して脳と繋がっています。証陽散EXは、消化管神経細胞の興奮を静めて、脳に危機が去ったという信号を送り、ストレス反応を解放すると考えられます。
ストレス反応が解放→頭部動脈圧が下がり、粘膜型マスト細胞が沈み、アレルギー反応が治まる、この流れで花粉症が治まるのではと推測されます。
ちなみに、証陽散EXがあまり効かなかった方に確認しましたところ、ほぼ全員が「甘い物大好き」「炭水化物大好き」という方々でした。
※血糖上昇によるストレス反応誘発と証陽散EXによるストレス反応解放はバーターの関係にあると考えられます。
つまり、証陽散EXの効果を十分に得るためには、食後血糖値の上昇をできるだけ抑える事がポイントになると考えられます。
※花粉症でない人は、スギ花粉IgE抗体を持っていないはずですが、アレルギー検査でスギ花粉IgE抗体の値が高いのに花粉症は全くないという人もいますし、逆に、スギ花粉のIgE抗体は低いのに花粉症の人もいます。
花粉症に対する証陽散EXの服用方法
1日2回(朝、夜)1回1包を基本にする
・症状が強い人や何かの要因で強くストレス反応が起きている人
※粘膜の動脈圧が強く、マスト細胞が沈みにくい状態になっている
→五苓黄解orJPS-3/黄連解毒湯を併用(症状に合わせてでもOK)
※粘膜の動脈圧をより強力に下げる働きの漢方を併用する