熱中症・かくれ脱水を防ぐ「水分補給」のコツ
脱水症は、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎の原因にも
脱水症は熱中症だけではなく、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎などの原因にもなります。
脱水症は、大量の汗などによって、身体の中の体液が減ってしまった状態のことです。脱水症を予防するには、水をたくさん飲めば良いというわけではありません。体液のほとんどは、身体の体液は、水とナトリウムなどの電解質と言われるミネラルで構成されています。
つまり、脱水症は、水分だけでなく、ミネラルも同時に失われた状態になります。食事をきちんととれていて発汗も多くなければ水を飲んでいればいいですが、食事がとれていなくて十分な塩分等のミネラルがとれていない場合や、大量の汗をかいたときに水だけを飲むと、体液が薄まって水中毒になる恐れがあります。
身体の中で体液をたくさん必要とする臓器は、脳、消化器、筋肉で、脱水症になると、これらの臓器に関連した症状が起こりやすくなります。
・脳ならめまい、立ちくらみ、集中力・記憶力の低下、頭痛、意識消失、けいれんなど。
・消化器では、食欲低下、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢、便秘など。
・筋肉では、筋肉痛、しびれ、麻痺、こむら返りなど
が起こります。
このほか、
・汗をかけなくなって微熱が出る
・血液の量が不足して心拍数が増加し、頻脈や不整脈になる
※血液の量が少なくなると血圧が低下し、脳に十分な血液を供給出来なくなります。その状態になると、心拍数を増やして脳へ血液を送ろうとするようになります。
こともあります。
急性の脱水症と慢性の脱水症
急性の脱水症は、下痢や嘔吐、大量の汗などで急激に体液を失ったときに起こりやすく、熱中症や、急性胃腸炎などに伴う脱水症で見られます。子どもは特に急性の脱水症になりやすいです。
慢性の脱水症は、日常生活で水分摂取が不足するなどして、徐々に体液が減っていく状態で。体の水分量が少ない高齢者に多いのが特徴で、急激な変化ではないため、本人も周囲の人間も、脱水症と気づきにくいのが特徴です。
慢性の脱水症が引き起こす7つの病気・不調
脳梗塞・心筋梗塞
体の中の水分が足りない状態では、血液の粘度が高くなり、流れが悪くなります。この状態が続くと、血栓ができやすく、脳や心臓に運ばれて細い血管を詰まらせてしまうリスクが高くなります。動脈硬化がある人ほど、脱水をきっかけとなり脳梗塞・心筋梗塞のリスクが高くなります。
肺炎・気管支炎
脱水によって粘膜のバリア機能が低下する事による細菌性肺炎が多くなります。空気と一緒に細菌やウイルスを吸い込んでも、気管支粘膜というバリアが防御しますが、粘膜は水分が十分にある事で機能します、水分が少なくなると防御機能が低下して、感染症にかかりやすくなります。
膀胱炎・尿路結石
脱水状態になると、尿量も減るため、尿の流れが悪くなり、外から入ってきた細菌や、腎臓が排出した老廃物を外へと押し流す力が低下してします。また、尿の量が減ると尿が濃縮されるため、老廃物が結晶化しやすくなるため尿路結石が発生しやすくなります。
認知機能や集中力の低下
体液が不足すると血液が少なくなり、脳へ血液が回りにくくなります。頭痛、倦怠感、眠気などの症状が起こりやすく、認知機能や集中力が低下しやすくなります。認知機能の衰えによって水分補給を忘れてしまい、より脱水が進む危険があります。
めまい・立ちくらみ
脳へ血液が回りにくいと、めまいや立ちくらみの原因にもなります。高齢者が、朝起きた直後に立ちくらみで転倒すれば、骨折から寝たきりになることもあります。脳梗塞も同様ですが、朝は脱水症になりやすく、起床後の転倒は要注意です。
口臭・歯周病
水分が足りないと、だ液の量も減ってしまい、その結果、口が渇いて口臭の原因となり、細菌が長く口の中にとどまることで歯周病の原因にもなります。
夏バテ・食欲低下
消化器は水分を多く必要とするため、水分が足りなくなると働きが悪くなり、吐き気、食欲低下などが起こってくる事があります。だ液が減って、味を感じにくくなることも食欲低下につながってきます。
高齢者は、「体液の貯蔵庫である筋肉の量が減り、体液が少なくなる」「のどの渇きを感じにくくなる」「水分がすぐに尿として出てしまう」など様々な要因から脱水を起こしやすく、そのため、体重の1~2%に当たる水分が減少しているものの、まだ自覚症状が出ていない、脱水の一歩手前の状態である「かくれ脱水」の段階からの対処が必要になります。
かくれ脱水チェック
下記の項目に一つでも該当すれば「かくれ脱水」の可能性があります
・皮膚がカサつくようになった。皮膚につやがなく、乾燥している
ポロポロと皮膚が落ちる
・口の中がねばつくようになった。食べ物がパサつく
つばが少なくて、つばをゴクンと飲めないことがある
・便秘になった、あるいは以前よりひどくなった
下剤(便秘薬)を使う頻度が増えた
・以前よりも皮膚の張りがなくなった
手の甲をつまみあげて離した後に、つまんだ跡が3秒以上も残る
・足のスネに“むくみ”がでるようになった
靴下のゴムの跡が、脱いだ後に10分以上も残る
さらに、上記の該当項目が一つでもあった人のうち、下記の項目でも該当するものが一つ以上ある人は、かくれ脱水の可能性が高く、何らかの脱水症予防策が必要となります。
・日当りの良いところ、または屋外にいる時間が長い(目安は1時間以上)
・普段よりも、集中力が低下している(例えば、落ち着かずイライラしたり、昼間でも眠りがちだったりする)
・トイレが近くなるため、寝る前は水分補給を控える傾向がある
・冷たい食べ物(例えば、氷・アイスクリームなど)や冷たい飲み物を好むようになった
・利尿薬を内服している(血圧のお薬に利尿剤が使われている事もあります)
「かくれ脱水」にならないために
水分の必要量は、体格や活動量などによって異なります。日本の食事摂取基準には水分の規程がありませんが、イギリスでは1日1.2リットル、ベルギーは1.5リットルをとるように勧めています。日本人でも体格はそれほど変わらないので、1日に1.2~1.5リットルくらいの量をとるといいでしょう。
経口補水液の注意点
経口補水液は、脱水症や食事がとれないときにはいいが、日常の脱水予防には適しません。経口補水液には、糖分、塩分が期言っていますので日常的に飲むと、糖分や塩分のとり過ぎになります。経口補水液を飲んで体調や気分が良くなったという場合、既に脱水状態になっています。
経口補水液は、体調不良で食事がとれないときや、高熱や嘔吐、下痢など脱水リスクが高い場合に利用するものになります。
普段の生活では、こまめに水分をとって脱水状態にならないようにすることがポイントです。
血圧の薬を服用している人は熱中症リスクが高い
熱中症による臓器障害が発生しやすい部位の1つが「脳」です。脳は血流によって温度が一定範囲になるようにコントロールされています。熱中症予防として「首筋を冷やすことが効果的」と言われているのは、心臓から脳へ向かう血管が首のところで体表近くを走っているためです。体が熱くなってくるとまず「首筋」に汗をかきますが、これは汗が蒸発する際の気化熱によって、首筋を流れる血液を冷やして、脳へ温度が下がった血液を送ることで脳の温度を下げるためです。
体温が高くなると、体表を走る血管が拡張するため「血圧が下がります」。
脳に冷えた血液を送り込むためには、ある程度の血圧が必要になります。血圧のお薬を服用している場合、血圧がかなり低くなってしまう事があり、脳に血液を送る力が低下してしまうリスクがあります。血圧が高いからと「減塩」をされている場合は、より血圧が低くなって脳へ血液を送る圧が低くなりすぎるリスクがより高まります。
また、血液で脳を十分に冷やすためには「血液がスムーズに循環している」事がポイントになります。炭水化物など糖質を摂って食後血糖値が高い状態では循環が停滞傾向になります。
この様な事が重なると、少しの温度上昇で脳温が高くなって熱中症になるリスクが高くなりますので注意が必要です。近年、日本の高齢者の熱中症増加にはこの様な要因が関係している可能性があります。
プラス薬局では、高血圧対策も行っていますのでご相談下さい。