基礎編
本当に必要な栄養
私たちの体を構成している細胞はタンパク質と脂質(脂肪成分)と水分で構成されています。生きていくことは、細胞が分裂して代謝をしていくことですので、タンパク質、脂質、水分は絶対に必要になります。
糖はエネルギーになりますが、細胞の構成成分ではありません。
タンパク質と脂質は体の構成成分であり、エネルギーとしても領されます。
※各種ミネラル、ビタミンは細胞が正常に働くために必要です。
タンパク質、脂質、水分が不足すると、細胞が代謝をしていくための原料が不足して生命を維持することができなくなります。
現代の食事がストレスを生み出す!
現代は、食事をすると「血糖値は上がるもの」と考えられていますが、農耕文明前の長い間の狩猟採取生活では、食事で血糖値が上がる事はありませんでした。※血糖値とは血液中のブドウ糖の量です
ただ、血糖値が上がる状況はありました。
それは、命が危ない時です。
つまり、人のDNAに刻まれている情報は「血糖値が上がる=命が危ない時」、つまり強いストレスに晒されたとき、になります。
血糖値とストレスの関係
ストレスにさらされると「ストレス反応」という生理反応が起きます。
類人猿の時から、人は大型肉食動物(トラ、ライオン、ヒョウ、クマなど)から食べられる側であり、台風、洪水、などの自然災害によって生命を失う、これが日常の環境ですごしてきました。
つまり、太古からの殆どの間「ストレス=命が危ない」で、その状況を回避するための生理反応が「ストレス反応」です。
体内で抗ストレスホルモンと言われる「ステロイドホルモン、アドレナリン」などがたくさん作られ、体を次の様に変化させていきます。
1、末梢血管や副交感神経支配下の消化器、生殖器などの血管を収縮させてその部位の血流量を抑制します→食欲の低下、性欲の低下として表れる
2,心臓の収縮を強め、交感神経支配下の肝臓、脳、骨格筋に多くの血液を集めます
→動悸、興奮、血圧の上昇などとして表れる
3,肝臓と筋肉に蓄えているグリコーゲンをブドウ糖に変えて、血液中に放出され、膵臓からのインスリン分泌が抑制されます。
これらの働きによって→血液中のブドウ糖が増えます。
つまり「ストレスによって血糖値が上がる」のです!
この事から、人のDNAに刻まれている情報は「血糖値が上がる=命が危ない」と言う情報で、自律神経を始めとした生理機能は血糖値が上がる度に、ストレストレスに対応する「ストレス反応」を起こします。
理由は、類人猿の時から文明がある程度発達してくるまでの殆どの年月で「ストレス」は数時間程度の短時間的なものであり、希に起きるという程度だったと考えられます。
今でも自然界においては、希なケースを除けばストレス状況は数分程度で生き残れるかどうかの決着がつき、生き残れたらストレスから解放されます。
つまり、自然な状態にある生物は長期間持続するストレスを耐え続ける、連日直面するという状況で生き続ける事はなかったからです。
しかし、文明を興し、発達させてきた「人類」は今までにはなかった「長期間持続するストレス環境」「連日、1日に何度も起きる」という状況を自らの手で作り出してきました。その1つが「現代の食事によって発生するストレス」です。
ストレス状況では、細胞レベルで負荷が増大し、その結果として、ダメージが発生します。
1回のダメージは僅かなものでしょう。
しかし、40年、50年と毎日繰り返していくとどうでしょうか?
細胞レベルのダメージでも、蓄積がある限度を超えてくると、様々な体調異常として表れてくることは十分に考えられます。
私は、この様な食生活を数十年間続けている事が生活習慣病など様々な現代病が出現してきた根本原因と考えています。
糖の取り過ぎで糖尿病になるというのは直感的に判りやすいと思いますが、わかりにくいのは、繰り返されるストレス反応が及ぼす長期的な影響です。
現代病と言われている、心筋梗塞、脳梗塞、ガン、は繰り返される「ストレス反応」による影響が大きく関与していると考えています(全て糖尿患者に多く見られます)。
その他にも、アレルギー、様々な皮膚疾患、関節炎、自己免疫疾患、認知症(認知症は3型糖尿病と言われています)、パーキンソンなどの脳機能疾患、ウツなどの精神疾患にまで関係していると考えています。
私は、食後血糖値によるストレス反応を「摂食性ストレス」と名づけました。
人間の本来の食生活
人間は消化管の構造から「肉食よりの雑食」と考えられます。
人類が発生してから約200~400万年程度と推定されています。
農耕文明が発生したのが今から約1万年前です。
農耕文明が出現する前のずっと長い間は狩猟採取生活でした。
人類が小麦、米を食べ出したのは農耕文明以降で、それ以前、人は穀類を殆ど口にできなかったと考えられています。
人の手が加わっていない自然では、米や麦などの穀物植物が群生していたのは、ほんの一部と考えられますし、原種の穀類は、熟した実は穂から地面に落ち、落ちた実は鳥やネズミなどの小動物(齧歯類)が先に食べてしまうからです。
人が穀類を口にできるようになったのは、熟しても地面に落ちない品種が発見され、それを人の手で増やすことができるようになってからになります。
人の手が加わっていない自然では、米や麦などの穀物植物が群生していたのは、ほんの一部と考えられますし、原種の穀類は、熟した実は穂から地面に落ち、落ちた実は鳥やネズミなどの小動物(齧歯類)が先に食べてしまうからです。
人が穀類を口にできるようになったのは、熟しても地面に落ちない品種が発見され、それを人の手で増やすことができるようになってからになります。
※現代でも自然界で生きる動物は糖を含む物を日常的に摂取していません。
※植物は加熱することで食べられるものが増えますが、生で食べられるものは限られます。
※太古の人は、肉食動物が食べ残した骨を拾い集めて骨の中の骨髄を主食としていたと言う説もあります。骨髄はビタミンを豊富に含んだ脂肪で満たされています。
集団で狩りをしていたというイメージもありますが、ライフルなど殺傷力が高い武器がないと、鹿などでも捕らえるのは殆ど出来ないでしょうし、イノシシと戦ってもまず人の方がやられてしまうでしょう。
ましてやマンモスなどの大きな相手になると集団になっても無理と思われます。
食べ物を得るのに消費するエネルギーと、食べ物から吸収するエネルギーの収支が+にならないと生きていけませんので、手軽に、かつ、ある程度のエネルギーを得られる物を日常的に摂らないと生命を維持し、子孫を残していけないという原則があります。
恐らく、古代の人が日常的に食べていたのは、昆虫、小魚や貝類などだったのではないかと考えています。特に昆虫の幼虫は、脂肪分を多く含み良質のタンパク質源にもなります。現代でも東南アジアの農村部やアフリカ奥地では昆虫の幼虫などが普通の食材として利用されていますし、日本でも宮﨑などではスズメバチの幼虫は「蜂の子」という高級食材として食されています。
子供は、カブトムシやクワガタなどの昆虫に強い興味を示します。
カブトムシ、クワガタの幼虫は白い幼虫です。蛾などの幼虫は赤や鮮やかな色をしているものが多く、人は、鮮やかな色の毛虫などに対しては嫌悪感を抱く傾向があります。これは恐らく、白い幼虫は毒がなく、鮮やかな色の毛虫には毒を持つものが多い事から本能的に、カブトムシ、クワガタに興味を持ち、蛾や毛虫には嫌悪感を感じるのだと思います。つまり、子供がカブトムシ、クワガタに強い興味を持つのは栄養豊富な食べ物が近くにあることを本能的に知っているからではないかと思います。
農業が出現してから「炭水化物」の摂取量が増加してきましたが、それも効率が悪く収穫が十分でない時期がずっと続きます。
農産物の収穫量が飛躍的に増加して炭水化物の摂取量が爆発的に増加し、更に糖分がいつでも好きなだけとれるようになるのは、産業革命、農業革命、流通革命と言われる3大革命以降のことになります。
それは今から僅か40~50年前におきたことです。
更に、いつでも甘いものを食べたいときに食べられる状況になったのは、コンビニエンスストアが増え、年中24時間営業が始まった20年程前からのことです。
血糖とインスリンの関係
膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌されています。
インスリンは、血液中のブドウ糖が細胞内に入るドアを開ける働きをします。
常に少量のインスリンが分泌されています。(これを基礎分泌といいます)
ブドウ糖は細胞の活動エネルギーとして重要ですので、血液中のブドウ糖量は常に一定範囲に調節される様になっています。
糖分を含む物を食べて、血液中のブドウ糖量が急増してくると、インスリンが急速に分泌され(これを追加分泌といいます)、ブドウ糖を「グリコーゲン」という形に変えて、肝臓と筋肉に蓄えていきます。
肝臓と筋肉に蓄えられるグリコーゲンが満杯になると、今度はブドウ糖を「中性脂肪」に変えて脂肪細胞に蓄えていきます。
この様に、体の脂肪は糖質から合成されていきます。
つまり、体脂肪は食べた脂肪ではなく、糖質から体脂肪になっていくのです。
※男性の場合、先ず内臓脂肪として蓄え次に皮下脂肪に蓄えていきます。
女性の場合、皮下脂肪に蓄える率が男性よりも多くなります。
平均すると、食べた糖質の約40%が体脂肪に合成されているとされています。
現代の食生活は、大量の糖分(糖質)を毎日摂っています。
つまり、毎日、1日に何度も多くのインスリンが追加分泌されていく事が繰り返されていることになります。
大量のインスリンが分泌されると様々な生理機能に影響を及ぼしていきます。
農業以前の長い狩猟採取生活では、食後に血糖値が上がることは殆どありませんでしたので、インスリンが大量に分泌される事もありませんでした。
つまり、人の体の生理機能は大量のインスリンが分泌される状況は想定外と言うことです。
近代になって増えている様々な近代病の根本原因に、大量のインスリン分泌による生理機能の変化が関係している可能性が考えられます。
※インスリンの分泌が増加すると並行してインスリン様成長因子(IGF-1)というホルモン様成分の分泌が増加し、様々な生理機能に影響を及ぼしていきます。
20才までは成長ですが、それ以降は老化になります。
※狩猟採取生活でのインスリンの目的は血液中のブドウ糖量を減らすことではなく、食べ物を得られたとき、その時に必要のない栄養を脂肪として蓄え、次に食べ物が得られるまで生き延びるための働きをしていたと考えられています。
現代社会の大きな問題
現代社会は、糖質の摂取量が過剰でタンパクと脂質の摂取が不足しています。
2007年と2008年の「国民健康・栄養の現状」という調査を解析した研究で、タンパク質と脂質の摂取量の減少に反比例するように糖尿病が顕著に増加していく事が報告されています。
これらの調査結果や現代の食環境を考えますと、糖尿病でない人でも少なくとも40才過ぎからは、ごはんなど炭水化物の摂取量を半分以下に減らして、その分お肉などタンパク質をしっかりと摂っていくことが、老化防止・健康維持にとても大切と考えられます。
糖質は必要な栄養ではありません
人が必ず摂らないと生命維持が行えない栄養成分という
「必須アミノ酸(アミノ酸がたくさん繋がったものがタンパク質)」
「必須脂肪酸(脂肪の種類)」はありますが、「必須糖質」はありません。
細胞はタンパク質、脂質、水、で作られている為、これらは細胞を構成する原材料で、絶対に摂る必要がある事は最初に述べました。
ミトコンドリアが存在しない赤血球はエネルギー源としてブドウ糖が必要ですが、赤血球が活動するためのブドウ糖は肝細胞がタンパク質(アミノ酸)から合成しますので、食事から摂らなくても問題ありません。
ストレス反応は消費エネルギーを増加させます
糖質摂取によって食後高血糖が上がるとストレス反応が起きます。
糖質はエネルギー(カロリー)はありますが、ストレス反応によって、カロリー、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミン、全ての消費量が増加するため、差し引きすると、栄養にはなりません。
※カロリーと栄養は別という事がポイントです
この様な事から、健康的な生活を送るための食事は人本来の食生活(人のDNAに沿った食生活)を送ることが重要なポイントになります。
糖分(糖質)を減らし、脂肪、タンパク質、ミネラル、をしっかりと摂る食生活が最も安全で、健康、そして運命にも関係してくると考えています。
※運命は、人生での選択の結果起きる事象です。
選択は、様々な要因を考え合わせて脳が判断します。脳がしっかり機能していないと的確な判断ができないのは当然で、脳がしっかり機能するためには、十分な栄養が摂れていることが欠かせません。